静岡県浜松市で犬のブリーダーをしている、ペットのブリーダーワンブーの山下です。当犬舎では、2008年の創業からフレンチブルドッグの繁殖を続けています。
フレンチブルドッグは、耳の脂が多い犬種です。耳掃除は、日頃のお手入れとして欠かせません。
ですが、当犬舎では耳掃除を、耳をきれいにするためだけのものとは考えていません。飼い主さんに耳や体を触られても、落ち着いて受け入れられる犬に育てる。そのための、しつけの一部でもあります。この記事では、耳掃除のやり方と、その考え方をお伝えします。
フレンチブルドッグの耳掃除はなぜ必要?
耳掃除の役割は、汚れを取ることだけではありません。
一つは、耳の状態を確認することです。耳垢の量や色、においの変化は、日頃から見ていないと気づけません。
もう一つは、耳を触られることに慣らすことです。耳掃除の間、犬は飼い主さんの指示でじっと待つことになります。これが、落ち着いて待つ練習になります。
耳を触られることに慣れておくと、将来、動物病院で診察や治療を受けるときにも役立ちます。毎回の耳掃除が、その積み重ねになるのです。
ワンブーでは2週間に1回を目安に耳掃除をしています
当犬舎では、2週間に1回程度を目安に耳掃除をしています。これは医学的な正解というより、当犬舎が続けてきたお手入れの習慣です。
汚れていなくても、2週間に1回は耳を触り、中を見て、少しの間待ってもらいます。きれいな耳でも、「触る・見る・待つ」を繰り返すことに意味があると考えています。
ただし、耳の状態は犬によって違います。汚れやすい子は様子を見ながら間隔を調整してください。赤みやにおいなど異常があるときは、普段のお手入れとは分けて考えます。
耳掃除の目的は“きれいにすること”だけではありません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
耳掃除の間、犬にはいくつものことを受け入れてもらいます。耳を持たれる。耳を広げられる。耳の中を見られる。そして、数分間じっとしている。
どれも、犬にとっては本来あまり好きなことではありません。だからこそ、飼い主さんがお手入れをしている間、落ち着いて待てることに価値があります。
当犬舎では、これを特別な訓練ではなく、日頃の習慣にしてほしいと考えています。2週間に1回の耳掃除は、その習慣を作るちょうどいい機会です。
嫌がったらすぐやめる、ではなく“待つこと”を教える

耳掃除を始めると、少し嫌がる子もいます。そのたびにやめてしまうと、犬は「嫌がればやめてもらえる」と覚えてしまいます。
当犬舎では、少し嫌がっただけで毎回終わりにはしません。暴れたら手を止めて注意し、落ち着いたらまた再開します。これを繰り返すと、おとなしくしていられる時間が少しずつ長くなっていきます。
犬の思考は「我慢→観念→従順」の順に変わっていくと、私は考えています。お手入れを受け入れる経験を積むことで、飼い主さんの指示で静かに待てるようになります。
丁寧に扱うことと、嫌がったらすぐやめることは、別のことです。
ただし、痛みや赤み、腫れ、強いにおい、出血がある場合は話が違います。いつもと違う強い抵抗を見せるときも同じです。体に異常がある可能性を考えて、しつけで押し切らないでください。
子犬のお渡し時に耳掃除・ブラッシング・爪切りを体験していただきます
当犬舎では、子犬をお渡しするときに、耳掃除・ブラッシング・爪切りを飼い主さんに体験していただきます。説明を聞くだけでなく、その場で一緒にやっていただきます。
目的は、お迎えのあと、ご家庭で正しく続けられるようにすることです。力加減や犬の支え方は、文章だけではなかなか伝わりません。どこまで触っていいかも、実際に触って確認していただきます。
そして何より、「お手入れはしつけの一部」という考え方を共有したいのです。子犬のうちに飼い主さんがお手入れを続けられれば、犬は自然と体を任せられるようになります。
お迎えのあとも、お手入れで困ったことがあれば相談していただけます。
フレンチブルドッグの耳掃除で使うもの
当犬舎で耳掃除に使っているものを紹介します。
コットン

耳の広い部分の汚れは、コットンで拭き取ります。
イヤーローションを含ませて、汚れを優しくぬぐうように使ってください。こするのではなく、汚れをコットンに移すイメージです。摩擦は、できるだけ少なくしてください。
綿棒
当犬舎では、耳のくぼみなど狭い部分や細かいところに、綿棒を使うことがあります。
ただし、ご家庭で耳の穴の奥深くへ差し込むような使い方はおすすめしません。使うのは、目で見て確認できる範囲だけにしてください。
アルコールフリーの赤ちゃん用おしりふき
耳の外側など、軽い汚れを拭くときには、赤ちゃん用のおしりふきも使えます。
選ぶときは、アルコールフリーの物にしてください。香料など刺激の強い成分が入った物も避けます。耳の穴の奥に入れる用途には使いません。
ティッシュ・タオル・ガーゼを耳掃除に積極的に使わない理由
ティッシュやタオル、ガーゼは身近で便利です。ですが、当犬舎では耳掃除には積極的に使っていません。
耳の皮膚は薄く、摩擦で傷つきやすい部分です。ティッシュやタオルは繊維や表面が粗く、こすると刺激になることがあります。そのため、耳掃除ではコットンを優先しています。
汚れは“奥から手前へ”出す
拭き取るときの向きにも気をつけてください。
手前から奥へ向かって拭くと、汚れを中へ押し込んでしまいます。見えている汚れは、奥側から入口の方向へ、外へかき出すように拭き取ってください。
汚れを中へ押し込む掃除は、かえって耳の負担になります。いつも「奥から手前へ」を意識してください。
耳の根元を持って広げ、見える範囲を確認する

当犬舎では、耳の根元を持って耳を広げてから掃除しています。
耳を広げると、耳の穴の入口が見やすくなります。その状態で、見える範囲をできるだけ確認してください。汚れの量や色、赤みがないかもこのときに見ます。
耳の根元を持たれることに慣れておくのも、大事な練習の一つです。
耳の奥に汚れがある場合はどうする?

本当に汚れがたまっているのは、耳の奥側であることが多いです。ですが、ご家庭で器具を深く入れて取りにいくのはやめてください。
当犬舎では、まずイヤーローションを耳に入れて、汚れを浮かせます。そのうえで、耳の根元を外側から軽くもみほぐします。
手を離すと、犬が頭をぶるぶると振ります。この動きで、奥の汚れが外へ出てきます。出てきた汚れを、手前でコットンで拭き取ってください。
イヤーローションの選び方
イヤーローションは、「アルコールフリー」か「オイルタイプ」であることが絶対条件です。当犬舎では、このどちらかの表記がない物は使いません。購入するときは、必ずパッケージの表記を確認してください。
耳の中の皮膚は薄く、傷つきやすいからです。小さな傷があるところにアルコールが触れると、しみて痛みにつながることがあります。
ただし、条件を満たしていても、犬によって肌に合わないことはあります。使い始めは、赤みやかゆみが出ないかを確認してください。
当犬舎でおすすめしているのは、APDCクリアのイヤークリーンウォーターです。現在、当犬舎の犬たちにはこれを使っています。
APDCクリアは価格が高めです。価格が気になる方には、ゾイックのナチュラルモード イヤーローションをおすすめしています。当犬舎でも、APDCクリアに切り替えるまでは、ずっとゾイックを使っていました。
掃除そのものはやさしく行う
ここで誤解のないようにお伝えしておきます。
やさしく掃除することは、犬を甘やかすことではありません。耳そのものを傷つけないように、丁寧に扱うということです。強くこすらない、皮膚を傷つけない。力で押さえつけることを目的にしない。
「やさしく掃除する」ことと、「嫌がったらすぐやめない」ことは、両立します。耳は丁寧に扱いながら、犬には落ち着いて待つことを教える。私は、これがお手入れの基本だと考えています。
こんなときは耳掃除だけで済ませない
次のような様子があれば、耳掃除だけで様子を見ないでください。
| 気をつけたい様子 | 例 |
|---|---|
| 見た目の変化 | 赤い、腫れている、出血している |
| においの変化 | 耳から強いにおいがする |
| 耳垢の変化 | 黒っぽい耳垢が急に増えた |
| しぐさの変化 | 頭を頻繁に振る、耳を強くかく |
| 触ったときの反応 | 触ると強く痛がる、いつもと違う強い抵抗がある |
こうしたときは、単なる「嫌がり」と決めつけないでください。必要なら、早めに獣医師に相談してください。
耳掃除は他のお手入れにもつながります
耳掃除で身につけた「落ち着いて待つ」習慣は、ほかのお手入れにもつながっていきます。
爪切りのときに足先を持たれる。ブラッシングやシャンプーで体全体を触られる。口元を見られる。体を支えられて、じっとしている。
当犬舎では、これらをすべて同じ考え方でつなげています。「必要なときに飼い主さんが触れられる犬に育てる」ことです。爪切りのやり方は、こちらの記事でまとめています。
将来の診察や治療のためにも“触られる練習”は大切です
犬も、けがや病気で動物病院にかかることがあります。
診察では、耳の中を見られたり、口を開けられたり、足を触られたりします。傷の確認や注射のときに、体を支えられることもあります。
普段から触られることに慣れている犬は、こうした場面を受け入れやすくなります。必ず診察が楽になるとは言えませんが、その助けになるはずです。耳掃除は、その練習を自然に積める機会です。
ワンブーで使っている耳掃除用品・飼育用品
イヤーローションは、当犬舎で今使っているAPDCクリアがおすすめです。価格を抑えたい方は、以前から長く使ってきたゾイックを選んでください。耳の脂が多いフレンチブルドッグには、どちらかを用意しておくと安心です。
耳掃除用品のほかにも、当犬舎で実際に使っている飼育用品をまとめています。
フレンチブルドッグのお手入れ関連記事
耳掃除以外のお手入れについても、記事を用意しています。
シャンプーの選び方と洗い方は、こちらでまとめています。
普段のブラッシングと、ブラシの選び方はこちらです。
抜け毛が増える時期や、部屋の掃除のコツはこちらです。
これから迎える方は、準備しておきたい物もあわせて確認してください。



コメント